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美しい生命の島|無人島・野崎島【五島列島の旅 09】

今回の五島列島の旅で、一番行きたかった野崎島。「野崎島の集落跡」は世界文化遺産の構成資産の一つ*1。想像をはるかに上回る美しい島でした。

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野崎島を歩く

野崎島へ入る際には事前連絡を!

前日中通島の「頭ヶ島天主堂」に行った際に、シャトルバスの待合所になっている上五島空港にたくさんの教会や島の情報が貼ってありました。

その中に、野崎島の集落が世界遺産候補(当時)で「事前連絡が必要」と書いてあったので、その場でおじかツーリズムセンターに電話を。

「明日海上タクシーで入島します」と伝えると、名前・電話番号・住所を聞かれました。無人島なので万が一のことがあったときのためかなと思います。野崎島には休憩施設があるけれど、そこを使用しない場合は入村料はいらないと言われたので、特にお金は支払っていません。

★詳しくは以下のリンクをご確認ください。
ご来島の前に | おぢか島旅| 長崎県五島列島・小値賀町の観光情報公式ホームページ

小さな観光案内所から

野崎島は無人島。現在、人は暮らしていません。

ただ、島の管理人さんが通ってきています。船着き場の目と鼻の先にある小さな観光案内所(ビジターセンター)には、野崎島の風土についての展示があり、そこで管理人さんから島についての情報をもらうこともできるため、まずはここに立ち寄ることをおすすめします。

ちょうど撮り終わったフィルムを交換して、いざ出発。

旧野首教会までは徒歩15分、けっこう高低差があってきついかもしれません

と言われて、体力のない私は心配になり……無料で貸し出されている杖を借りました(が、実際には、若い人なら心配しなくても大丈夫な程度でした)。

打ち捨てられた廃墟たち

歩き出すとすぐに廃墟がありました。

普通の住居が廃墟になっているみたいで、教会関連の施設ではなさそう。

あたり一面にビール瓶が散乱していたり、日用品が落ちていたり、生活の跡がくっきりと感じられます。

廃墟って、いつ見てもモヤっとした説明できない気持ちになってしまう。大切にされていた家が一瞬で「廃墟」になった様子は、別に悲しい出来事がなくても、訴えかけてくる物悲しさがあるというか。

自分も、(賃貸だけれど)引っ越しでトラックに荷物を積み終わって部屋に戻ったとき、妙に「ガラン」としていて「あれ、本当にここに何年も暮らしていたんだっけ……?」と寂しくなることがよくあるのです。家って生活においてウェイトが非常に大きい存在ですよね。物理的にも大きいし。でもそれは単なる入れ物にすぎず、ハードにすぎず、自分とは簡単に切り離すことができてしまう。その事実が切ないのかもしれない。

かつての生命と、いまの生命

廃墟を数件抜けると、段々畑のようなひらけた土地に出ました。


菜の花が生い茂り、後ろには赤土の崖、手前には水路や、小さい焼却炉のようなレンガ積みの工作物。


青い空、若い緑と相まって、この光景には奇妙な美しさがありました。

なるほど、ここで人が暮らしを営んでいたんだ。

と、確たる証拠が形として残りながら、それはもう過去のものとなっていて、覆いかぶさるように自然が自生し勝手に美しくなっている。とにかく見たことのない、想像もできないような景色でした。人はもう誰もいないのに、圧倒的な生命力がある。


快晴の5月という条件もきっと良かったのだと思います。ネットで見た冬の野崎島の写真は、同じ風景なのにとても悲しい雰囲気だったから。

自然が強く生きている状況が、私たち人類が誕生する前の世界かのように見える。

でも人が暮らした跡があるから、奇妙でした。


すぐそばには団地のような場所もありました。室内には布団が敷かれ、開け放した窓の周りには植物がからまっています。おぞましく、そして美しい光景でした。

※このあたりの写真が事情により欠落しています。その理由は次回の投稿で詳しく……

静かな海と鹿たち

団地を過ぎてしばらく山道を登ると、海を見下ろせる場所に出ました。


海はこれ以上ないってくらい透明に澄んでいて、それに相反するように周りの自然は荒々しく力強い。風が強く吹くからなのか、木々はみんな風になびいたような形でひんまがっています。

いわゆるビーチの透き通った穏やかさとは違い、けっこう過酷な環境なのかもしれないなぁと思う。


途中、鹿がいました。三匹。こちらを見ている。可愛い。彼らは強風に耐えられるんだろうか。

家の猫を思い出す。元気かな。



するとすぐに、野首教会が見えました。

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【この記事で使用しているカメラ/レンズ/フィルム(左下に透かしのある写真)】
Nikon F3+Nikkor 28mm f/2.8+Fujicolor C200