無人島・野崎島までの15分【五島列島の旅 08】
旅にかけるお金の価値基準って、本当に人それぞれですよね。私はたぶんケチなほうですが、この15分×2=30分にはちょっと奮発!
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津和崎丸
初対面
車で津和崎(つわざき)港に着くと、電話で予約した津和崎丸の船長さん(という呼称で合っているのだろうか?)が待っていました。
● 「わ」ナンバーの車で約束の時間に現れる
● いかにも旅行中の夫婦
という状況で向こうは一瞬で判断したらしく、結局一度も名前を聞かれることはありませんでした。
船長さんは、標準的な体格に日焼けした浅黒い肌の、人の良さそうな男性。口数は多くないけれど、時々冗談を言ってくれます。
絶対に行きたかった野崎島
五島について調べ始めてから、真っ先に「行きたい!」と思ったのが野崎島にある旧野首教会です。
(字面を見るとちょっと怖そうだけれど、別に凄惨な事件が起きた場所ではありません)
野崎島は五島列島の北に位置する無人島。かつては集落がありましたが、高度経済成長期を経てだんだんと人口が流出してしまい、平成13年についに無人島になったのだそう。*1
そんな野崎島の高台にいまだポツンと建っているのが、旧野首教会です。煉瓦造りのずっしりした建物、まわりに自生している木々、のびのび暮らす鹿たち、青い空と海。すべてが重なり合う風景は五島列島の中でもひときわ魅力的に違いない、と思いました。
↑煉瓦造りの建物が旧野首教会
野崎島へのアクセスは難しい
しかしこの野崎島、アクセスにやや問題が。
基本的なルートは、近くの小値賀島(おぢかじま)に渡ってから「はまゆう」という定期船で島に渡るという方法です*2。しかし便は少ないので、1日のうちに中通島から小値賀島経由で野崎島へ、の往復は無理。そうなると小値賀島にも宿泊しなければいけない。小値賀島も魅力的な島だとは思ったけれど、二泊三日の旅行で一泊使うのは痛い……。
そこで、ネットで情報を集めて知ったのが「海上タクシーを使う」という方法。中通島から海上タクシーに乗り、直接、野崎島に渡ってしまいます。
海上タクシー!?
―よくわかんないけど、ハードル高そう……。
と思って調べると、確かにハードルは高い。というか金額が高い。最初にみつけたところは、野崎島までの往復で2万円でした。団体ならいいけれど、2人で2万円はキツイ。
さらに調べていたら、たどり着いたのが津和崎丸。往復で9千円!片道15分の距離なので、高いといえば高いけれど、絶対に見たい場所だと思えば出せなくもない金額でした。
海上タクシー津和崎丸
↑ホームページはなくて、ブログのみ。ここに書いてある電話番号に直接かけて予約しました。ドキドキです。
旅行ではケチって後悔したくない
遡ること数年前。私は一人でヨーロッパ建築を巡る旅をしていました。
フランスで、巨匠ル・コルビュジエ設計の「ロンシャンの礼拝堂」を見に行った時のこと。
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最寄り駅から礼拝堂まではタクシーでないと厳しい距離、つまり山の中のような立地でした。当時の私は今よりもさらに楽天的で、「駅まで行けばコルビュジェ巡礼者の一人や二人いるだろうから、相乗りすればいいや」などと(勝手に)思っていたのですが、予想が外れて、駅には観光客がまったくおらず閑散としていました。
タクシー代は、ハッキリとは覚えていないのだけれど……学生の私の財布にはきつい金額だったんです。たぶん野崎島までの海上タクシーぐらいか、もっと高かったかな?
しばらくその駅で右往左往した結果、私は諦めました。ロンシャンの礼拝堂を諦めて、帰路についたのです。
なんと愚かな!!!
またいつフランスに行けるかもわからないのに、そこでケチってどうする!多少高くても絶対に行くべきだったんだ!(涙)
……というわけでそれ以来、「旅行では見たい場所を諦めない!」と心に決めました。
前置きが長くなりましたがそんなわけで、津和崎丸さんにお世話になることに。
15分の貸し切り海上タクシー
早速チャーター船に乗り込みます。
船内はカーペット敷きで、靴を脱いでゴロゴロできるようになっていました。といってもめちゃくちゃ揺れるのでゴロゴロする余裕などなかったけれど。まわりには漫画雑誌やスティック型の掃除機なんかが置いてあります。
↑入り口から数段下がって靴を脱ぐ
↑2人だと広い。6人ぐらいまでは乗れるのかな?
船に乗っている時間は15分くらいです。窓を開けると、水しぶきが少し入るけれど気持ち良い。水面より下にいるというのは不思議な気分。
名前も聞かれず目的地とか何も言わず乗ったので、なんとなく「どこに連れ去られるのだろう……」という若干の怪しさを感じてしまったけれど、しばらくして、左手に見えていた島が野崎島だと気づきます。
運転手さんが「教会が見えますよ」と教えてくれました。たしかに、砂浜の先に小さく旧野首教会らしき建物が見えます。このとき見た教会は、正直言ってとてもこじんまりとした、ちっぽけな雰囲気でした。
↑教会が見えたのは一瞬で、写真は撮りそこねてしまった
「今もらうと迎えに来なくなっちゃうかも」
すぐ、港に着きました。
「12時ぐらいに他のお客さんも乗るから」と言われ、帰りは12時の待ち合わせに(……なったはずなのに、実際は帰りも私たちだけでした。なまっていたからうまく聞き取れなかったのかもしれない)。
―お金はまだいいんですか?
と聞くと、
「帰りでいいです」と。
数秒後、思いついたように
「今もらうと迎えに来なくなっちゃうかも」
と(たぶん)言ってニコッと笑う。けっこうひょうきんな人みたい。
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津和崎丸
海上タクシー津和崎丸
個人でやっているようなので、事前に予約を。日時と人数、名前と連絡先を伝えればOK。電話で予約しました。ブログが実はかなりマメに更新されていて面白いです。
※掲載している情報は2018年時点のものです。訪問の際には必ず最新の情報をご確認ください。
【この記事で使用しているカメラ/レンズ/フィルム(左下に透かしのある写真)】
Nikon F3+Nikkor 28mm f/2.8+Fujicolor C200