世界の端へ|野崎火山火口跡【五島列島の旅 11】
野崎島の魅力は旧野首教会だけでなく、無人島ならではの手付かずの自然。その壮大なスケールと美しさは、想像の域をはるかに超えていました。
↓前回の話はこちら
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世界の端へ
「野崎火山火口跡」を目指す
野崎島と教会が本当に気に入っただけに、夢中で撮った写真を失ってしまった(であろう)ことにはガックリきたけれど*1……気を取り直して再出発!集合時間の12時までは1時間半ほど時間が余っていました。
相変わらず、風が強い。
教会から港の方向へ戻る途中に山を登るルートがありましたが、時間的に戻ってこれるか自信がなかったのでやめました。代わりに来た道を帰り、野崎火山の火口跡を目指すことに。
↑旧野首教会、野崎港、火口跡の位置関係
道なき道を歩く
教会の近くでほんの1時間ほど前に鹿と遭遇した場所を再び通ったけれど、もう鹿の姿は見えなくなっていました。
菜の花の段々畑を過ぎたあたりで左に曲がります。
しばらく歩くと道がなくなってきます。「本当にこっちで合ってるのかな?」と不安になったところで小さな標識を発見。一応このルートでいいみたい。
鹿の姿は見えないけれど、ここにも鹿のフンがたくさん落ちています。海側の敷地はフェンスに囲まれていましたが(鹿対策なのか?)、フェンスとして機能しないほど強風になぎ倒されていました。本当に風が強い。遮るものがないから当然なのだろうか。
調べてみると、このフェンスはやはり鹿対策だったようです。鹿から田畑を守るために住民たちが設置したのですが、無人島となってしまった今、穴も開いて意味を成さなくなっているとのこと。
参考:野崎島の段々畑・シカの群れ - 野崎島 観光 | トラベル - [ありの木]
港の方向を振り返る
展望所からの景色は……
港から10分ほど歩くと、「北崎展望所」に到着。
左手にはかつての噴火口が見えます。
海が信じられないほど澄んで、青い。
崖の赤い土。
樹木の緑色。
それぞれの色が極限まで引き出されているさまは「美しい」と何度言っても足りないような景色でした。
私たちはその光景に見とれ、というかむしろ心をグーンと引っ張られるような気分で、しばらく放心していました。
ふいに、鷹のような鳥が飛んだ。
すぐそこに、エメラルド色の海の上に浮かぶ小さな島があります。赤い土の上にこんもりと緑の塊ができている。
あそこには何があるのだろう?生物がいるのだろうか?
大した距離ではないはずなのに、今自分たちが立つこの場所とは全く別の世界が展開されているような……あそこに未確認の生物が暮らしていると言われても、すんなり信じてしまいそうな。
「あぁここが世界の端っこかもしれない」という感覚でした。
人間の介入しない世界
少し別の方向に歩くと、より平坦で何もない土地に出ます(ここもサバンナか?)。
すると出会ったのは……満ち潮で水が届く部分だけに、はたまたかつて川があった場所だけに、緑が育ったかのように見える景色。信じられない、見たこともないような絵。
とっても残念なことに、ここでフィルムが足りなくなって撮れなかったのです……。というわけで、iPhoneで撮影した写真を(iPhoneの性能は素晴らしい!)。
不思議。きれい。いや美しい……。と、少ないボキャブラリーで目の前に広がる景色を称え合う二人。
なぜこんな育ち方をしているんだろう?
これが(おそらく)人間が意図したものでなく、さらに全く人間の役に立っていないという事実が、私にとっては大きな驚きでした。見て楽しむために植えられた花畑でもないし、収穫して食べるための農作物でもない。なのにこんなに美しくて尊いものがあるなんて。
人間が介入する前提の世界に自分は生きているんだ、と、人間がいない場所で逆説的に知る。人間がいなくても(いないほうが?)世界はこんなにも美しいなんて……。
約束の12時
帰り、また少し廃墟を見て、港に戻りました。
大きな木の下で。
12時ちょうどに津和崎丸はやってきました。
船に揺られている間、二人とも無言で、いま離れた島を窓から注視していた。
十字架が見えた。今回は行けなかった教会の跡(※舟森集落*3)だ。あそこにも力強いものがありそうだ。時間があれば行きたかったなぁ。
行きと同じくものの15分ほどで津和崎港に到着。
わずか3時間ほどの野崎島での滞在。本当に充実した、忘れられない時間になりました。
(つづく)
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【この記事で使用しているカメラ/レンズ/フィルム(左下に透かしのある写真)】
Nikon F3+Nikkor 28mm f/2.8+Fujicolor C200