石の教会は静かに海を見ていた|頭ヶ島天主堂【五島列島の旅 04】
2018年7月に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成要素の一つである「頭ヶ島集落」を訪れました。
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昼食難民に注意!
頭ケ島集落(頭ケ島天主堂)は、中通島のちょうど真ん中あたり、有川港の近くにあります。若松島付近から有川港までは、車で30〜40分の距離。
若松島を出発する時点で14時半だったのですが、実は……早朝に東京を出てからここに来るまで、お昼を食べ損ねてしまっていたのです。
どこかで軽く食べられないかな〜と探すも、どの店もランチは14時か14時半まで。15時過ぎると選択肢は全くありません。(カフェらしきものも見当たらないし、ファーストフードも皆無)
五島で美味しい食べ物といえばまずは海鮮、つぎに五島牛、そして五島うどん。お昼だから五島うどんが食べたかったのだけど…有川港にある「五島うどんの里」に行っても、うどん茶屋は営業終了……。
結局、有川港近くのポプラ(コンビニ)で弁当やらおにぎりやらを買って、車の中で食べました(港は風が強過ぎて断念。とにかくこの日は風が強かったんです)。
でもこれも、楽しかったな。…というか、お腹が空きすぎていて、もはや食べられるというだけで異常に幸せ。
まさに空腹は最高のスパイス!
旅に出ると思わぬハプニングやうまくいかないことが必ずあるけれど、五島に来てまでコンビニの焼きそばを食べているというのも、それはそれで面白いなぁと思いました。地方に旅行するとよくあることかもしれません。
ちなみに有川港周辺は一応街並みがありますが、人はほとんど歩いておらず、お店もあまりやっていない、かなり静かな所です。
中通島全体で、コンビニ(ポプラ)は2軒程度、スーパーもほとんどないし、ファーストフードもないし、とにかく食事には注意したほうがいいです。前もってガイドブックをみて目星をつけ、営業時間帯を狙って行く。できれば予約を。行けば何かしらあるだろう、という感覚は通用しません!
頭ヶ島天主堂
頭ヶ島とは?
飢えを満たしたところでいよいよ、頭ケ島天主堂を目指します。
頭ヶ島天主堂は中通島から橋でつながった「頭ヶ島」という小さな島にあります。この島では、かつて1軒をのぞいて全員がキリシタンだったそう。離島のさらに離島ということで、役人の目が届きづらいこともあり、潜伏キリシタンが増えたようです。
五島崩れの際に信徒たちは島を離れてしまいましたが、迫害が終わってから頭ヶ島に帰ってきて、教会(天主堂)を建設したんだとか。*1
「五島崩れ」とは?
「崩れ」とは、潜伏時代に信仰を語り継いできた組織が大規模に摘発されることである。
日本は明治時代を迎え、開国したにもかかわらず禁教が解かれないなか、1865年の大浦天主堂での「信徒発見」をきっかけに、五島でもキリシタンたちが次々と信仰を表明した。明治政府は組織を一掃するため、弾圧を始めた。久賀島の牢屋の窄(さこ)では静かな湾に面したわずか6坪の牢屋に約200人のキリシタンが収容された。
この悲劇がプティジャン神父によってヨーロッパに伝えられると、日本は各国から非難を受けるようになり、やがて明治政府はキリスト教を認めることとなった。
出典:
久賀島から始まった五島崩れ | 「おらしょ-こころ旅」(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産)
設計は鉄川与助
五島の教会の多くは「鉄川与助」という建築家兼大工棟梁の手によってデザインされ、建てられています(むしろ当時は建築家という概念がなかったのでしょう)。この頭ヶ島天主堂もしかり。石造りの教会は珍しく、その石は、近くの島から切り出したものを信者が運んだとのこと。
- 作者: 林一馬,川上秀人,土田充義,鉄川進,山田由香里,LIXILギャラリー企画委員会,住友和子編集室,村松寿満子,白石ちえこ
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★鉄川与助のお孫さんが運営しているサイト
長崎の教会 鉄川与助(おじいちゃんが建てた教会)
まずは上五島空港へ
上五島空港という現在は使われていない空港が観光センターになっており、観光客はそこへ行って車を停め、バスで頭ヶ島天主堂まで運んでもらいます。つまり、頭ヶ島天主堂に直接車で行ってはいけないので、注意が必要です。
★詳しくはこちら
頭ヶ島の集落|教会を訪れる|長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
どことなく日本の宗教建築を思い起こさせるような形態が特徴的な、かわいらしい空港です。(とても小さい)
駐車場はかなりゆとりあり。なぜ空港のまわりってこういうパームツリーっぽい木が生えているんだろう?
空港内の観光センターは展示スペースにもなっていて、上五島にある教会の内観や説明が観れるようになっています。名産品のお土産も少しだけ売っています。
ほどなくして、バスは天主堂へ向けて出発。乗車人数は10人弱、乗車時間は10分程度。
空港は山の上にあったので、山を下って教会に向かうようなルートです。
ぽつんと、静かな場所
バスは天主堂のすぐ近くに停まり、出発時刻までは各々自由に見学できます。
天主堂の前方には長いアプローチ(道)があり、その脇にはサツキ(?ツツジ?いつも違いがわからない…)がきれいに咲いていました。
遠くに見える石造りの天主堂は、これまで見た教会とはあきらかに違う重厚感があります。
うしろに静かな山並みを背負う姿も含めて、絵になる教会でした。
どこか独特な印象を受けるのは、そのやや頭でっかちなプロポーションのせいじゃないかと。全体の高さに対して、十字架のてっぺんからドームの部分までの比率が大きく、丸窓も低めの位置についている。こんな表現が適切かわからないけれど、白い帽子をかぶった給食のおばちゃん的なずんぐり感があります。いい意味で!
この石のひとつひとつを手作業で運んで積んでいったのだから、大変だよなぁ……。
この木、おもしろい形だなぁと思ったけど、樹種がわからない。
意外なことに内部は可愛らしく、中ノ浦教会と同じように椿のモチーフが散りばめられており、この男前な外観からはちょっと想像し難いようなパステルカラーの雰囲気でした。でも、中ノ浦教会のようなビビッドな椿ではなく、もうすこしふんわりとした印象(椿の色も赤ではなく白)。
空が広く、静か。
突然のゲリラ豪雨
一通り見学し終わり外でバスを待とうとしたら、途端に大粒の雨が降ってきました。
どんどん強くなり、ついには本降りに。
これは、ゲリラ豪雨だ!
電気自動車の充電スポットの狭い狭い掘建て小屋に数人が入って、雨宿り……。
すると、隣にいたおじさんに話しかけられました。
ここでもやはり「どこからきたの?」と聞かれ、東京です、というと、また「へえ〜」という(”よくそんな遠くから!”というような)反応。
「五島だけ?」
「そうです。教会を観に来ました」
「雨降っちゃったから今日はもう終わりでしょ?」
「本当は夕陽を見に行きたかったんですよね…」と言うと、
「うーん、今日はもう無理だね」と。それくらい、雨は強烈だったのです(関東はその翌日かなり荒れたとニュースで知った)。
そうこうしているうちにバスがきて、みんなでわーーーっと駆け込む。
空港に着く頃には雨はほとんど止んでいました。
教会の傍らにはキリシタンの墓地があります。教会も、墓地も、静かに海を眺めているようでした。
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頭ヶ島天主堂
長崎県南松浦郡新上五島町友住郷頭ヶ島638-1
(有川港から車で約20分)
見学時間:9:00〜17:00
↓詳しい解説、内観などたくさんの情報があります。
頭ヶ島教会
※掲載している情報は2018年時点のものです。訪問の際には必ず最新の情報をご確認ください。
【使用しているカメラ/レンズ/フィルム(左下に透かしのある写真)】
Nikon F3+Nikkor 28mm f/2.8+Fujicolor C200